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Dive to learn #1~For Product Mgr~ 「レガシーな業界での新規事業・スタートアップの戦い方 後編」

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スタディプラス株式会社  取締役COO 宮坂直(写真右)

新卒で株式会社リブセンスに入社。内定者アルバイト時代に「転職会議」事業を立ち上げ、転職会議事業の責任者として、同社の中心事業に育てる。その後、株式会社カカクコムに転職し、食べログ本部にてネット予約・予約台帳事業責任者として事業を牽引。スタディプラス株式会社では、Studyplus、Studyplus for School、新規事業を統括。

セッション2 宮坂直「レガシーな業界での新規事業・スタートアップの戦い方」

50社提案して契約0件、氷山モデルから見えてきたこと

で、ですね……そこで、50社に提案して契約0件っていうオチがあって。本当に売れないんですよね。 最初、その営業メンバーが「売れないです」って言ってたんですけど、僕それを信じられなくて…いやいやこれNPS8だぞ、みたいな。

ただ、50社失注し続けると様子がおかしい、これなんかおかしいんじゃないか、失注理由をちゃんと理解しようみたいな感じで探り始めたんですよね。 氷山モデルと社内で言っていたのですが、失注理由をとにかく具体化しようと言う動きと、「今起きている事象は氷山の一角で、実はこういう背景がある」というメンタルモデル的なアプローチを進めました。

失注時、機能が足りないんですみたいなことを言われるんですけど、本当にそうなのかな?と。

あの機能があれば売れる、という理論が永遠と続くので、じゃあこの機能があったらやるんですか?みたいな形で仮定の話でどんどん積み上げしていき、お客様の意思決定の文傷を作りました。

「今学習管理とかしていますか?」→「していない」 「学習管理する必要はあると思っていますか?」→「あるとは思っている」 「じゃあなんでしないんですか?」→色々ある。 「この課題が解決すれば、学習管理するんですか?」…こんな風に、機能不足が理由なのか、マインドの問題なのか、現場の業務のオペレーションの都合上なのかを考えました。 ここで分かったことは、どうやら機能不足が課題じゃなさそうだ、と。 f:id:kana_peko:20190110152701j:plain

失敗に早めに気が付くこと、新規事業の期待値調整の重要性

シンプルに、学習管理っていうのが全然定着していなかったりとか、その体制ができていないっていうのが学びだったんですね。 もうひとつの学びとしては、公開前に正しい期待値を得られて良かったなということ。

散々期待値を高めて3カ月の開発期間を終えて、そこから営業した場合。 営業の結果出るのって1~3カ月はかかるでしょうから、そうすると開発期間3カ月、営業期間3カ月で、この失敗に気が付くのに6カ月必要だったわけですね。 それを開発する前に状況を全て察することができたので、そこは結果的に良かったかなと思いました。

僕が前職で経験した新規事業はそうだったんですけど、プロダクトの出来が良ければ良いほど社内も期待値が高まって、そのままリリースしてしまいました。 リリースしたら思いっきり全力ですっ転んだときに、「撤退するんですか?しないんですか?」みたいな話がすぐ出てくるんですけど、それって期待値が高かったから出てくる問だなと僕は思っていて。

新規事業ってそんなに大袈裟な人員とか開発体制をかけなければ、そんなにコストじゃないと思うんですよ。 結局新規事業を殺してしまうっていうのは、期待値が高かった自分達だなと思っていて、リリース前に正しい期待値を得るっていうのは良かったと思いますね。

社内で新規事業を始める時は、絶対に期待値を最小化するっていうのは経営会議も現場も含めてやりました。 これはチャレンジであって、過度な期待を絶対に持たない。過度な期待を持てば持つほど新規事業が短命になっていくということは学びでした。

リニューアル完了、カスタマーサクセス強化に舵を切る

2017年7月ですね、リニューアルが完了しました。 プレセールスは完全に失敗しました。

ただ、見込みがあるお客様は10校くらい集まっていたので、まず既存顧客さえ満足できなければ、新規顧客を獲得しても意味がないと、ある種開き直りました。 状況が状況だったので、撤退するっていう選択肢もありましたが、お客さんは10校くらいるんだから、満足させる所から始めようという思いでした。

結果的には、モチベーションが高いお客さんは製品に満足して頂いて、ちゃんと活用して頂けた。一方で、導入モチベーションが低いお客さんはやっぱり活用できないっていうのがわかりました。

学びとしては、どう社内でこの状況を整理するかについてのノウハウですね。 プロダクトマネージャーとカスタマーサクセスの役割だなと考えているのですが、導入モチベーションが低いお客さんが活用できないのは多分お客さんが問題。 躓く理由はリテラシーだったり、業務を行っている環境だったり、組織の問題だったりするんですけど、これはカスタマーサクセスの問題だなと。

導入モチベーションが高いお客さんが満足できないのは、単純にプロダクトの問題で、プロダクトマネージャーの問題だという風に切り分けました。 後はカスタマーサクセスの問題だなという風に割り切ったというのは、この時期の学びでした。

営業方法の模索、PRへの注力

そして、2017年10月。 製品はどうやら問題なさそう、ただ顧客の獲得の見通しが全然たっていない。 50件提案して契約0件という状況のままなんですよね。

流石にこれはいつまでも棚上げできないなと。 営業を普通にやったらダメだということだけは分かっているんです、ここに営業体制10人を仮に敷いたら人件費がかかって、やればやるほどどんどん自分の首を締めることになるので、まずお金がかからないってことが大事だなと思っていました。

その上で、じゃあどういう営業方法があるんだろうなっていうのをひたすら模索しました。機会があれば色んなところに出向いて挨拶して、何か一緒にできませんかねっていうのを全く脈絡もなくまわっていくみたいな感じで。 結局見つけたのは、大手法人についてはとある人脈が豊富な方と顧問契約できたので、全国の学習塾に大手法人の方がリーチできるとういう良い出会いがありまして、これが決め手になりました。

中小法人については、リテラシーが高い人と低い人みたいなところでした。ここが多分ほとんどの失注の原因だったので、僕らが行ったときに、モチベーションの高いお客さんと低いお客さんって見分けられないんですよね。 当たり前なんですけど、リストを見ても何も手がかりがないので。

じゃあ問い合わせしてもらうしかない、どうやって問い合わせを増やそうというところで、広告は資産に残らないなと思っていて。 広告って覚えてくれないと思うんですよね。見たなっていうところがあっても、うちの製品に対して良い感情が残るかといったらそうでもないと思うので、これは資産にならないからやめようと。 注目したのがPRで、ブランドを作ろうと考えました。

正しい期待値と長期戦を見越した営業活動

そんなわけで、ブランディングを積み上げていくことが、資産になると考えました。 それに近しいところで、イベントやコンテンツマーケティング、事例を発信するというところだけに切り替えました。 そうしたところ、大手法人の獲得は順調に行き、中小法人はプラス10倍になりました。

なので、ちゃんとモチベーションの高いお客さんに出会えさえすれば、問い合わせ積み上がっていくなってことで、かなり状況が好転したっていうのが次のこの時期でした。

この時の学びとしては、闇雲に営業をすると本当に自分の首を絞めると思ったので、売上を最大化するというマインドを早期に全部捨てて、長く事業を続けられるという風に切り替えたことが良かったなと。

繰り返しになるのですが、正しい期待値を付けるということと、長期戦を見越した営業活動が大事ですね。 仮に、事業にかけられるコストが1億円だったとした時に、半年で1億円使い切って撤退するのか、5年で1億円を引き延ばして波が来るのを待つのかとなった時に、後者にシフトしようというのが正しいのではないかなと。

最後の課題は導入モチベーションの低さ、解決するのはカスタマーサクセス

時は進んで、2018年1月。 最後の課題は、導入モチベーションが低いお客様でした。 カスタマーサクセスで解決しようと考えたときにに、一番最初の整理を思い出していただきたいのですが…何が課題かというと、そもそも学習管理という業務が無いことなんですよね。 支援対象業務が不在だと、業務の必要性からちゃんとクライアントにお伝えしないといけない…中々高いハードルです。

そうなるともはや商品のカスタマーサクセスじゃない。 「この商品使ってください、分からないところは教えますよ」っていう次元ですらないんですよね。なので、「学習管理やりましょう!なんでやるかといったら、経営観点としてこうなんです」っていうような経営コンサルティングだなと考えました。

Studyplus for Schoolのカスタマーサクセスチームって結構手厚くて、3人が専任でいます。同業の学習塾向けのサービスと比べても、多分導入コースに比べてのサポート体制って異様に多いんですけど、3人って。 なぜかというと、今カスタマーサクセスは話題になっているんですけど、完全に逆張り。 同じカスタマーサクセスと思えないくらいのオペレーションを引いていて、Studyplus for Schoolを契約したら必ず付いていきますという体制にしています。

けど僕らはもうコンサルティングだから、有料でそれ自体が商品っていう次元でカスタマーサクセスを考えようといことも取り組み中です。

モチベーションの高いお客様を雇用、カスタマーサクセスの取り組み

学びがあったのは、商品のカスタマーサクセスのオペレーションを検討しても、クライアントを通すとそのクライアントのモチベーションが低い・高いで、結局検証以外の所でつまずくことがすごい多いんですよね。 なので、実際まだ問題解決していないんです。

今やっている取り組みは、一番そのモチベーションが高いと思われるお客さんをうちに雇用することです。 元学校の先生で、とあるICTツールを一番推進していた社員がいたり、塾出身者でも同じような存在の人が8月から入社する予定です。 「先生経験でITリテラシー高くてモチベーション高いんだから、あなたが活用できなかったら多分これは活用できないってことだよね。あなたが活用できるんだったら、この方法を広めればいいだけだ」とシンプルに整理しています。

まとめ

大企業にいたときは、必要だろうが不要だろうが、短期的に成果が出るものは資金を投入することができるのですが、スタートアップはお金が無いので出来ないんですよね。

そうなると、大企業と同じ土俵にいてもしょうがないので、長期的な挑戦かつお金がかからないことっていうのをどうやっていくかが重要。 5年10年かかる世界を、大企業はだいたい1、2年くらいのスパンで新規事業やるんですけど、スタートアップは5年10年かけますというのが、大企業との差別化かなと。

あと、資産になろうがなるまいが効率が良いことはとにかくやりやすい、1カ月2カ月で結果が出るものについては大企業も模倣しやすい。 一方で、例えばPRとか、カスタマーサクセスもコンサルティングレベルでそういう人材を抱えて、さらにそのパッケージを作っていっていうところとかーある意味効率の悪いことが鍵じゃないかなと。

スタートアップは、文化ごと提供することが強みになるんじゃないかと。 ただお金があればそういう文化を作れるかっていうとそういう訳でもないので、その模倣しにくい、効率が悪くて文化とかブランディングっていうところに集中したいと考えています。 資産にならないことを効率悪い感じでやってもしょうがないので、効率が悪くて、でも資産に残っていくよねっていうところだけ徹底してやろうっていう感じでやっていました。

長くなりましたが、私からは以上です。